ご挨拶 佛立研究所所長 向井淳報

 近年、日本でも宗教的な浮動(遊)層が増加しているといわれます。人の動きが大都会に集中し、流動化して、自分の家の宗教や宗派もよく知らない人も増加しているのです。
 また、仏教(釈尊の教え)そのものは大切だとは思っていても、寺院や僧侶に対してはその必要性をあまり重視しない傾向も増加しつつあると言われます。
 けれども、本当は、仏教には現代人の生き方をも、正しく導き、苦悩から救済しうる深い智慧を蔵しているのです。
 哲学者の鶴見俊輔氏は「学びほぐす」というあり方の大切さを訴えています。
 これは、氏が17歳のころ、ハーヴァード大学の学生となり、日本図書館でアルバイトをしていたところに、たまたまヘレン・ケラーが通訳と共に来館したときの話に由来します。その時、ヘレン・ケラーは、自分のためにかけられた宮城道雄の「春の海」を、蓄音機に触れて、その振動を手に感じることで、音を感取し、何かの感想を言ったのです。そして鶴見氏に質問し、ハーヴァードの学生だと答えると「私はその隣のラドクリフ女子大学で、たくさんのことを学んだ(learn)が、それを学びほぐす(unlearn〈学び直す〉)ために、さらに多くの時間を必要とした」旨を語ったというのです。このことを鶴見氏は「与えられたスウェーターを一度解きほぐし、もう一度自分に合うように編み直す作業」に譬えています。
 考えてみれば、誰しも、どんな事象でも、それを理解するというのは、それは「自分なりの理解」であることを免れません。私たちは、釈尊や日蓮、日隆、日扇聖人等の教えを、そういう意味でできる限り正確に「学びほぐす〈学び直す〉」努力がとても大切なのだと存じます。
 佛立研究所も、「学びほぐす」努力を大切にし、現代の人びとに、その教えをできる限り正しく伝えるべく、研究を行いたいと思っています。
 当研究所に対する、さらなるご理解とご支援を願っております。

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