脱走ペンギンの生活力
2012年6月6日(水)
 

blog-shochou-20120606.jpg 去る5月24日、東京都立葛西臨海水族館から3月に脱走し、行方不明になっていた、絶滅危惧種のフンボルトペンギン1羽が、江戸川河川敷で休んでいるところを、駆け付けた同園職員によって捕獲・保護され、約3か月ぶりに園内に戻ったという。

 このペンギンは生後1年3か月で体長は脱走時と同じく約60センチ、体重は約3280グラム。他のペンギンとほぼ同じくらいだとか。ただし、脱走中、江戸川河口や晴海沖などで、自力で泳ぎ回って餌を獲っていたからか、胸の筋肉等がたくましくなり、全体にマッチョになっていたという。

 私は、実はこのニュースにかなり感動した。近来稀な良い話、快挙ではないか!

  きっと、このペンギンは元々は野生で、それが捕獲されて日本の水族館に連れて来られていたのだろう。だとすれば、ペンギンが脱走したいのは当然だ。いくら労せずして毎日餌を与えられたとしても檻の中、外には危険があったとしても、やはり自由に生きたいだろう。ただ、必死で脱走した場所は、故郷を遠く離れた東京湾内…仲間も居らず、たった一羽で生きるしかなかった。それでも、3か月間も頑張ったのだから偉いではないか。彼らの3か月は、人間なら何年間にも相当するのではなかろうか。
 
 フンボルトペンギンは、フンボルト海流が流れ込む南米のペルーからチリの海岸に暮らしているペンギン。野生種は約1万羽にまで減少しており、絶滅危惧種〔レッドリスト〕の中でも「危急」 〔VU-Vulnerable〕に指定されている。
しかし、私が感動したのはこの小さなペンギンが見せた野性的な生命力であり、生き抜こうとする逞しさだ。  昨今、日本人は世界中から「温室育ち」だと見られている。最もひ弱だと思われているのも日本人だ。確かに、海外で、すぐに腹をこわしたり、寝込んだり、泥棒の被害にあったり、騙されたり…。若者の姿勢が一番悪いのも日本人だといわれ、何かのトラブルに遭っても、毅然として対処しようとしないのも日本人。要は日本人は軟弱だと思われているわけだ。もちろん、全部がそうではなく、例外もあるだろう。 
 
 でも、残念ながら、概してそういう評価なのだ(因みに、多くの国では、スリや置き引きをする人間も悪いが、される方も間抜けだと思われている)。 そういえば、私がまだ幼いころ、日本の田舎では、犬も猫も半分は放し飼いみたいなものだったし、鶏だってそうだった。そして、あの頃の犬も猫も鶏も、子供たちも、もっと生き生きとして逞しかったように思う。
 
 
 何しろ、鶏だって、暗くなって眠るときには、かなり高い木の枝などに飛び上がって眠っていた。だから、あの頃の鶏は逞しく、肉も旨かった。子供たちも、今よりは体格は劣っていても、元気で体力があり、頑丈だったのではないか? 「可愛い子には旅させよ」とはよく言ったものだ。

 今の日本人が、脱走したフンボルトペンギンから学ぶことは、きっと沢山あると思うのだ。ペンギンが話せないのが残念。もしも口がきけたなら、研究所の講師に招きたいくらいだ。(J・M)
<写真はウエスティンホテル大阪にて [梅田の早い七夕飾りとスカイビル]>